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広河さんトークショー「ジャーナリストの視点から」 [odekake]

 

三軒茶屋キャロットタワー内、
生活工房で行われた広河さんのトークショーに
参加してきました。

仕事を終えてからの参加で
間に合うか心配でした。
無事、間に合いましたが
60名定員の会場は満席とのこと。

広河さんのお話の全てを書き留めることは
できませんでしたので、
部分的に自分なりの解釈で書き留めたものを
綴ります。
ですので、お話の前後に繋がりがないことを
ご了承ください。

 

今回のテーマは「ジャーナリストの視点から」

問題点として、ジャーナリストのアイデンティティー
を挙げていらっしゃいました。

イラク戦争の時に、
あるアメリカ人のジャーナリストが
自国に都合のいいことしか伝えないことに対し、
何故なのかを問うと、
「ジャーナリストである前にアメリカ人だからだ。」と、
答えたそうです。

自国に都合のいいことしか伝えないということは、
真実を伝えなかったり、
または、隠蔽することに繋がることもあるわけです。
それが、ジャーナリストとしてどうなのか。
ジャーナリストとして以前に、
人間としてどうなのか。

大手メディアは、ジャーナリズムを勉強した人を
採用したがらないそうです。
会社が求める人材が欲しいのであり、
志があり、ジャーナリズムを
きちんと勉強した人というのは、
時に、会社にとって邪魔な存在になるのでしょう。

日本に限らず、ジャーナリズムの問題が
問題にならないということが、問題のようです。

 

お話は、チェルノブイリ、福島の原発事故について
進められていきます。

広河さんが郡山で講演をした際に、
郡山の方たちに、
「本当のことを言った方がいいですか?
それとも、安心できるお話をしたほうがいいですか?」と
いうようなことを尋ねると、
「本当のことを知りたい」と、仰ったそうです。

判断するためには、本当のことを知ることが
必要だということです。

チェルノブイリでも、住民を避難させるべきか、
本当のことを知らせるべきか議論が起きました。
日本は原子力委員会などに、市民はいませんが、
チェルノブイリでは、議論の際、軍の人間や市民も
参加したこと、これは日本と全く違うところです。

ただ、医学者(特に放射線学の専門)たちが、
原子力産業を守る側だというのは、
チェルノブイリも日本も同じです。

日本でも、本当のことを話すと、
「不安を煽る」という言葉で片付けられてしまいます。
原発から30キロ圏内に住む女性、子どもを
優先的に避難させるのは世界の常識であり、
スリーマイルの事故の時も、
当時の保健局長が住民を避難させることを決めると、
避難の様子がメディアで伝えられ、
不安を煽ったと、保健局長が更迭されてしまいます。

スリーマイルの時も、
国もメディアも医者たちなど、原子力産業側だったので
住民(母親たち)は信用せず、
どの地域に、どんな病気の人がどれくらいいるのか、
自ら地図を作って調べたのです。
すると、他の地域と比べて、
特別、病気の発症は多くないと
国が発表したこととは違い、
やはり原発周辺の住民の病気の発症率は
高かったのです。

安全に対する考えが、男性と女性とでは違って
カイワレを食べてみたり、水を飲んだりという
パフォーマンスをして、
「安全だ」と言った政治家が日本にもいましたが、
それは、その人にとっては安全かもしれないというだけ。
女性は、お腹の中の子どもや、子どもの命という
ことを思って安全を考えるので、
そういうところが男性とは違う。

チェルノブイリから120キロ離れたキエフは、
当時、トップが女性だった。
子どもたちを全員、保養所などへ避難させました。

 

日本のメディアは、
チェルノブイリ原発事故と福島原発事故を
比較して、チェルノブイリ事故の時ほど
深刻な影響はないような報道もしましたが、
チェルノブイリ原発事故における
様々なデータに対し、それが本当かどうかの
疑問も持たず、検証もせず、そのまま流している。
専門家たちが言うことに対しても、
日本の大手メディアは疑問を持たない。

 

(病気の子どもとお母さんの写真)
チェルノブイリ事故によって、
子どもが白血病や小児甲状腺がんなどを発症すると、
お母さんたちは、原発を責めず、自分を責めたそう。

子どもが病気になってしまったのは、
事故当時、自分がベランダに出て様子を見てしまった
からだとか、
何故、避難しなかったのだろう、
何故、専門家やテレビを信じてしまったのだろうと。

そして、それは、
これから福島でも起こるかもしれないということ。

原発ではなく自分を責めるお母さん・・・
お母さんの気持ちを思ったとき、
同じ母親として、胸が痛みました。

 

小児甲状腺がんは、手術をしても転移することが
あるので、こまめに検査することが必要で、
早期発見、早期治療すれば治るそうですが、
福島では、2年に一回の検査でいいと
言われているそう。
(山下俊一氏の指示の下で)

チェルノブイリでは、
ある14歳の少女が4歳の時に被曝し、
治療が遅れ、がんが全身に転移し、
手の施しようがないと判断され、
自宅でただ痛みに耐え続けていました。
広河さんが「何か欲しいものは?」と尋ねると
「モルヒネが欲しい」と言ったそうです。
薬も、当時、国の財政が厳しく、
生きる見込みのある子どものために使われた為、
彼女には与えられなかったそう。
それでも、何とかモルヒネを入手し、使うと
痛みが和らぎ、眠れるようになったそうです。
それから2か月後くらいに少女は亡くなりました。

 

また、広河さんが父親代わりとなって
面倒を見ていたある少女は、
希望も失い、学校にも行かない中、
たまたま見た日本語に興味を持ったので、
広河さんが日本語の教材を渡したそうです。
すると、日本語を勉強するようになり、
大学の日本語学科の試験に合格し、
その後、先生になったそうです。

広河さんは、医者以外でもやれることはあると、
それは保養のことにしても、仰っていました。

広河さんは、自分が救援と報道の両方が
できているという自負はないと言います。

原発事故が起きたら大変なことになると
わかっていながらも、
事故の対策ができていなかった。
大手メディア、フリーランス、医師、専門家などが
一丸となって対策を講じておかなければ
ならなかった。

福島原発事故のときも、
ヨウ素剤の配布をしようと動いたが、
言葉は悪いけれど、県に妨害された。
でも、非難するだけではなく、
自分たちももっとやらなければならないことが
あったのに、できる対策をとっていなかった。

 

今、必要なのは、
放射能の影響を受けやすい子どもたちの
病気の発症を抑えるために、免疫力を高めること。
その為には、保養が必要。

医学的な専門家より、救援の専門家のほうが
現実に対応できる。

 

最後に、会場からの質問で、

・何を信じたらいいか分からない中、
何のメディアを信じますか?

まず、疑ってみるけれど、
その疑いに対し、
ちゃんと答えるようなところは信じる。
というようなお話だったかと思います。

 

広河さんは、学生さんたちに講演された時、
「ジャーナリストになりたい人」と聞くと、
大勢が手を挙げるのですが、
それは、大手企業に勤めたいだけではないのか?と
聞くと、会場はシーンとなるそうです。

ジャーナリストでも、医師でも、
責任があり、誇りある仕事であることを
忘れてはいけない。


私のまとめた文章では
上手く伝えられませんが、
大まかに、このような感じです。

マクシンスキーさんとの講演会で
お話された内容もあったり、
他のトークショーなどでもよく拝見する
お写真などを通してのお話もありました。

 

ジャーナリストは、まず疑うことから
ということですが、 
お話を聞いていて思ったのは、
調べていくうちに、疑問が出てきたとき、
その疑問を関係するところなり、人なりに
投げかけるのは当然のことで、
その疑問に対し、答えるのも、
本来は、当たり前なことであって、
疑問に答えられない、答えないということは
全く不自然で、おかしいんですよね。

「疑問に答える」という、
とてもシンプルなことが
都合の悪いことを抱えている所、人には
なかなかできない。
日本だけでなく、どの世界でもそうですよね。
特に、メディアの世界はそうなのでしょう。

 

本当に、志があり、ジャーナリストである前に
人間であるということを忘れない
ジャーナリストが
日本でも育っていってほしいです。

 

トークショー後、4階の写真展を見て、
3階の展示を見ていた時、
私のすぐ後ろを広河さんが通って、
普通に歩いて帰って行かれたのですが、
いい意味で、あのオーラの無さ、普通さ、
いつもの変わらない感じ、
そして、疚しいことなどないから
いつも堂々としていられる、
そこから、何か強さを感じます。


写真展では、東日本大震災の写真も
多かったのですが、
それは、言葉で「被災地を、震災を忘れないで」と
言うのではなく、
フォトジャーナリストとして、
広河さんは、写真を展示することで
訴えているようにも感じられました。

ぜひ、会場へ足を運んでみてください。

 

最後になりましたが、
第2回自由報道協会賞 3.11報道賞を
DAYS JAPANが受賞されたそうです。
広河さん、DAYSスタッフの皆様、
おめでとうございます。

 

 


「DAYS JAPAN 写真展 地球の上に生きる
世界の未来を作るために」

開催期間:~2013年2月3日(日)(入場無料)

     11:00~19:00 会期中無休

会場:  世田谷文化生活情報センター生活工房
     (三軒茶屋キャロットタワー)

     4階ワークショップルームB
     
    [関連展示]3階生活工房ギャラリー
     9:00~20:00

     チラシ (PDF)

 


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nicolas

「伝える」って仕事、改めて考えてしまいます。
どこかに「利益」とかが発生すると、
またこれも伝わらないことが多くなりそうです。

景気回復よりも原発の対応、
集中して政府にお願いしたいです。
by nicolas (2013-01-28 12:08) 

sou

> にこさま♪

ジャーナリストとして、取材しますよね。
「伝える」ということも仕事なんだけれども、
最初は、そこで取材して様々な情報を得る。
次に取材に行くとき、
情報を知った上で、自分は何をすべきなのか。
そこが大事だということをお話していらしたと
思います。
何度取材に行っても、ただ話を聞くだけで
終わっているだけでは、どうなのか、と。

そして、景気回復よりも原発への対応、
子どもたちの避難や保養を優先して
行なうこと、にこさまと同感です。
ちゃんと向き合ってほしいです。
by sou (2013-01-28 14:36) 

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